1974年パリ、カトリック人口が多数を占め更に男性議員ばかりのフランス国会で、シモーヌ・ヴェイユ(エルザ・ジルベルスタイン)はレイプによる悲劇や違法な中絶手術の危険性、若いシングルマザーの現状を提示して「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」と圧倒的反対意見をはねのけ、後に彼女の名前を冠してヴェイユ法と呼ばれる中絶法を勝ち取った。1979年には女性初の欧州議会議長に選出され、大半が男性である理事たちの猛反対の中で、「女性の権利委員会」の設置を実現。女性だけではなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など弱き者たちの人権のために闘い、フランス人に最も敬愛された女性政治家。その信念を貫く不屈の意志は、かつてアウシュビッツ収容所に送られ、“死の行進”、両親と兄の死を経て、それでも生き抜いた壮絶な体験に培われたものだった-。
『エディット・ピアフ 愛の讃歌』『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』に続き世紀の女性を描く3部作の渾身のラストとしてオリヴィエ・ダアン監督が完成させた本作は、公開初週NO.1に躍り出た後10週連続トップ10入りのロングランヒット、240万人を動員し2022年フランス国内映画の年間興行成績NO.1の記録を樹立。2017年に89歳で生涯を閉じた際には、国中がシモーヌ・ヴェイユ死去のニュース一色となり、国葬が執り行われ、キュリー夫人などの偉人たちが眠るパンテオンに5人目の女性として合祀されたが、未だその人気は衰えないことが証明された。
演じるにあたり8kg増量して本作に臨んだエルザ・ジルベルスタインの威厳ある演技、当時を再現した豪華な美術や、カール・ラガーフェルドがシャネルのアトリエで特別にデザインする程ファッションも愛したシモーヌ・ヴェイユの衣装も見逃せない。
1967年フランス生まれ。1991年にマルセイユ地中海美術大学を卒業。1988年から1997年にかけて7本の短編映画を撮影し、数多くのミュージックビデオを監督した。アルテTVコレクション「同時代の少年少女たち」の1章として制作された初監督作品『Frères(兄弟)』が、1994年ベルリン国際映画祭に選出され、1997年には初の長編映画『Déjà mort(すでに死んでいる)』を監督。ブノワ・マジメル、ロマン・デュリスが出演し、今日でもカルト的な人気を誇っている。2001年には舞台化されていたシャルル・ペローの童話「親指トムの奇妙な冒険」を映画化した『プセの冒険 真紅の魔法靴』が興行的に成功を収める。2002年 にイザベル・ユペールが売春婦を演じた『いつか、きっと』を、翌年には再びブノワ・マジメルとタッグを組み『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』を監督。2006年に監督した『エディット・ピアフ 愛の讃歌』はアカデミー賞3部門にノミネートされ、主演のマリオン・コティヤールはアカデミー賞主演女優賞に輝き、世界中にその名を知られるようになった。その後、2010年にはレネ・ゼルウィガーとフォレスト・ウィテカー出演の『My Own Love Song』で初のアメリカ映画を監督。2012年に監督したニコール・キッドマン主演『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』は2014年カンヌ映画祭のオープニング作品として上映された。
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(2014)
『エディット・ピアフ 愛の讃歌』(2007)
『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』(2004)
『いつか、きっと』(2002)
『プセの冒険 真紅の魔法靴』(2001)
1968年フランス生まれ。モーリス・ピアラ監督の『Van Gogh(ヴァン・ゴッホ)』で映画デビューし、1992年Acteurs à l'Écranミシェル・シモン賞を受賞、セザール賞有望若手女優賞にノミネートされた。その後、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作ジェラール・コルビオ監督『カストラート』、セザール賞2冠のロジェ・プランション監督『葡萄酒色の人生 ロートレック』、ミック・デイヴィス監督 アンディ・ガルシア共演『モディリアーニ 真実の愛』など、壮大な恋愛映画に出演。フィリップ・リオレ監督やレティシア・マッソン監督など、著名な監督の作品にも参加し、主演したラウル・ルイス監督の『Ce jour-là(その日)』は2003年のカンヌ映画祭コンペに選出された。フィリップ・クローデル監督『ずっとあなたを愛してる』ではクリスティン・スコット・トーマスと共演し、セザール賞で作品賞を含む6部門ノミネートされ、自身も助演女優賞を受賞。またコメディ映画にも出演し、フランク・デュボスク監督『パリ、嘘つきな恋』は興行的に成功した。2001年にはユニセフ親善大使も務めている。
『アーニャは、きっと来る』(2020)
『パリ、嘘つきな恋』(2018)
『ずっとあなたを愛してる』(2008)
『モディリアーニ 真実の愛』(2004)
『葡萄酒色の人生 ロートレック』(1998)
『カストラート』(1994)
1995年フランス生まれ。5歳のときに女優としての第一歩を踏み出し、パリ13区のコンセルヴァトワールで修行を積み、続いてストラスブール国立劇場に入団。2015年6月に王立劇団コメディー・フランセーズに入団し、イザベル・アジャーニ以来の最年少入団となる。映画にも活動の場を広げ『Une jeune fille qui va bien(元気な若い女の子)』で2021年セザール賞有望若手女優賞にノミネートされた。
『レア・セドゥの いつわり』(2021)
『スザンヌ、16歳』(2020)
『パリのどこかで、あなたと』(2019)
『黄色い星の子供たち』(2010)
1963年ベルギー生まれ。13歳で入れられた全寮制の学校で、クラスメートの代わりに学芸会に出演したことがきっかけで演技に興味を持ち、リエージュのコンセルヴァトワールに入学。わずか2年で最優秀賞を獲得した。1996年、ダルデンヌ兄弟監督の映画『イゴールの約束』で初めて重要な役を演じ、それ以来、グルメはダルデンヌ兄弟の多くの作品に出演している。彼らの作品『息子のまなざし』で2002年にカンヌ映画祭主演男優賞を受賞している。
『サンドラの週末』(2014)
『ヴィオレット ある作家の肖像』(2013)
『息子のまなざし』(2002)
『イゴールの約束』(1996)
1973年フランス生まれ。アンドレ・テシネ監督の『野生の葦』で主演し注目を浴び、エリック・ゾンカ監督の『天使が見た夢』で共演したナターシャ・レニエと共にカンヌ映画祭主演女優賞を受賞。ヨーロッパ映画賞・リュミエール賞・セザール賞でも主演女優賞に輝いた。エレクトロデュオ ダフト・パンクの一人であるトーマ・バンガルテルと結婚し二人の息子がいる。
『CQ』(2001)
『プセの冒険 真紅の魔法靴』(2001)
『日曜日の恋人たち』(1998)
『天使が見た夢』(1998)
『野性の葦』(1994)